日本再新 - 元衆議院議員 きいたかし ブログ -

世の中の出来事に対して一言。 日々の活動日記も。
日本再新 - 元衆議院議員 きいたかし ブログ - TOP  >  日本の政治 >  貸与型奨学金の現状と対策

貸与型奨学金の現状と対策

4月の大学新入学を控え、奨学金が再び注目を集める季節となった。

奨学金は、意欲と能力のある学生等が経済的理由により学びを断念することなく、安心して学べる、学び続けられるために欠かせない仕組みである。

文部科学省によると、2011年は全大学生の約37%にあたる約96万人が日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金を借りている。くわしい現状については、以下のリンク(文部科学省ウェブサイトへの外部リンク)を参照いただきたい。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm

利用者が増加の一途をたどる日本の奨学金制度は、長らく運用されているものの、特にここ5~6年利用する側が直面する課題と運営する側の意図がかけ離れている場面に幾度となく遭遇する。この乖離の溝を日本の政治行政はまだ埋め切れていない。時には、運用の溝にはまって、意図せずブラックリストに掲載されるような事例まで現れる始末である。

今回は、現在の日本の奨学金制度、とりわけに大学生向けの貸与型奨学金の現状と対策について書きたい。

<ここ数年の改善状況>

我が国では日本学生支援機構によって実施される国の奨学金制度は、ここ数年においても改善が図られてきた。

例えば、民主党政権の折に実現した「所得連動返済型無利子奨学金制度の創設」がそうだ。「家計の厳しい学生等(給与所得世帯の年収300万円以下相当)の将来の返済の不安を軽減し、安心して進学等できるようにするため、奨学金の貸与を受けた本人が卒業後に一定の収入(年収300万円)を得るまでの間、返還期限を猶予するもの」というのがこの制度の趣旨だ。卒業後、すぐに返済のめどが立たない人に配慮した内容になっている。

この制度とともに、無利子奨学金の人数枠の拡大、高校在学時に申し込みを行う予約採用の人数枠の拡大、家計急変世帯への緊急対応、授業料の減免制度の充実・運用改善などをセットにして直面する奨学金ニーズに対応しようというのが政府の意図である。


<現状の課題と対策>

一方、現行制度の課題は何か。

最大の問題点は、貸与型奨学金返済段階における重い負担である。日本学生支援機構の奨学金は高校段階から利用可能で大学院や海外留学にも活用可能だが、数百万から積み上がると1千万円近い借金を20代にして背負うこととなるしくみである。

その結果、就職難等により返済の遅れや返済不能に陥るケースが相次いでいる。滞納者は2004年度で約25万人だったが、2012年度には約33万人に増加している。滞納者は派遣社員など非正規雇用の労働者が2割以上を占め、無職・休職中も2割近くにのぼっている。返還猶予や減免などのしくみを知らないあるいはそういったしくみでカバーできないケースにはまった利用者は「債権回収」の対象となってしまう。時にはブラックリスト入りということになってしまう。

もちろん、世の中では「借りたものは返す」が当たり前である。返済金については、次の世代の奨学金貸与の原資に充てることとなっているので、運営する側からすれば、「円滑な返済」は事業継続の前提である。返還期限の猶予や減額返還の制度も現存しており、返済の無理強いはしておらず利用者への対応を丁寧に行うなどの運用改善を行ってきていると政府はこれまで説明している。

返還金の回収を促進することによって大学等奨学金事業の健全性を確保するとして、平成26年度予算案においても、日本学生支援機構に対する返還金回収促進経費(返還相談体制の充実、債権回収業務の民間委託、延滞事由の要因分析等)を措置している。

債権回収の改善

一見良さそうに見える「返還金の回収促進」であるが、この制度運用に利用者と運営側の意識の溝の原因があると私はみている。具体的には、日本学生支援機構が奨学金を受ける学生に対して、奨学金の返還を滞納した場合には指定信用情報機関へ情報掲載することの同意を取るようになったことが貸与型奨学金をめぐる問題の核心にある。信用情報が傷つきブラックリストに載せられるのはこのことに端を発する。

トラブルに見舞われている利用者からは、前触れもなく突然ブラックリストに載せられたという声が聞こえる。日本学生支援機構側からは、これまでも文書や電話も含めて丁寧な情報提供や相談、督促に努めているという説明になる。この違いは何かといえば、ある程度機構側で情報提供や返還の督促をしても猶予や減免の相談・手続きがないままである滞納者に対し、債権回収業者を差し向けてその業者にその後の回収対応を一任してしまっている点にあると考える。学びの支援のプロではない債権回収業者に利用者の立場に立った丁寧な対応を期待するのは厳しいのではないか。例えば、丁寧な対応につながるガイドラインを回収業者側に示せているか。この債権回収業者の対応内容について、不適切な対応を未然に防ぐ意味でも文部科学省や機構が直接把握して国民に明らかにすべきである。

返済方法の改善

債権回収に加えて改善されるべきは、現在返還中でなおかつ返済に困る状況にある利用者の返済方法である。

本当に返済に困っている利用者に対する対策は前進を見つつある。
平成26年度予算案では、真に困窮している奨学金返還者の救済として、延滞金賦課率の10%から5%への引き下げ(平成26年4月以降に生じる延滞金から適用)、経済困難を理由とする返還期限猶予制度の制限年数の5年から10年への延長、返還期限猶予制度等の適用基準の緩和、延滞者への返還期限猶予制度の適用を通じ、真に困窮している奨学金返還者に対する救済措置を一層講じる、とされている。有利子奨学金を返還する際の利子負担の軽減については、在学中は無利子及び返還中は低利子とするために利子補給金を措置するとしている。

ここで抜けているのは「所得に連動した返済」の発想である。創設された所得連動返済型無利子奨学金制度は、あくまでこれから借りようとする現役大学生が対象である。実際に返済に窮している滞納者、例えば現在非正規労働者やアルバイトとして働く卒業生は対象に入っていない。返還期限猶予を10年に延ばすことも、返還期限猶予の適用基準を緩和することも行うのは望ましいと思うが、本来優先して行われるべきは、現在返済中の滞納者に対して原則として所得に応じた返済額の再設定を行うことであると考える。卒業後における返済猶予や減額返済はあくまで機構側に相談があってからしか制度適用とならないからである。現在返済中の利用者についても、現役大学生に適用されている所得連動型返済と同様に「返済を待ちましょう」という所得ラインを設けるべきである。

返済に用いられる銀行口座のことを機構では「リレー口座」と呼んでいる。リレー口座とは、『返還金が後輩奨学生の奨学金としてリレーされる』という意味である。

先述したような、卒業生への所得連動型返済を原則として適用することはこの「リレー」の趣旨にもかなうものである、つまり現行制度の枠組みを大きく損なうものではなく実現へのハードルは低いと考える。国は早急に実現すべきである。

国による給付型奨学金の導入

もうひとつ実現されるべきは、国による給付型奨学金制度の導入である。
望めば学ぶ機会を得られる日本をつくっていくならば、本来は返済が不要な奨学金、給付型奨学金を国が創設するのが筋である。日本においては、給付型奨学金は一部の財団等でしか実施されていない。
下記の外部リンクは給付型奨学金を実施している団体一覧の一例である。
http://syougakukin.liblo.jp/archives/67540341.html

しかし折からの低金利で財団の運用益が大幅に減少しており、存亡の危機にある民間の給付型奨学金は多い。

国は高校段階で一部実施するのが精いっぱいの状況である。平成26年度予算案で、経済困窮世帯の高校生向けの給付型奨学金が始めて制度化される運びになったのがそれである。

給付型奨学金創設の最初にして最大のカベは、いわゆる真水の財源確保である。貸与型のように「返済分を次の原資に」というわけにはいかない。毎年真水の税金が直接投入されなければならない。

不用不急で、なおかつ人手や資材の不足で対応しきれず予算未執行状態にある公共事業に予算枠を回すくらいならば、「教育再生実行」の一環として、まずは経済的に苦しい世帯の学生に対し、一定の成績要件を課した給付型奨学金を国は実施すべきである。一定要件の下とすることで限られた予算を踏まえた現実的な予算額にしていけると考える。奨学金を受けた人たちは、卒業後プライドを持って日本の発展に寄与してくれると確信する。

また、国以外の奨学金活用も積極的に進めるべきである。一昨年あたりから国と民間企業の共同出資による奨学金を創設する構想も動いている。合わせて給付型奨学金を提供する大学への支援や、既存の民間奨学金を提供している財団法人等の存続・運用支援を行うことで、官民での奨学金事業の受け皿を大きくできるのではないか。

人口減少社会まっしぐらの現在、資源乏しき我が国がこれからも世界で生き残っていくには人材と科学技術を磨きあげていくしかない。その基盤となる教育・人材育成の基盤たる奨学金事業は以上のような政策を手始めに今後もさらに充実していくべきである。
[ 2014/03/13 11:52 ] 日本の政治 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
ポスター設置のお願い
ポスター
画像をクリックするとポスターが拡大します。

ただ今きいたかしポスターを貼ってくださる方を募集中です。
北九州市門司区、小倉北区および小倉南区の方で、お願いできる方がいらっしゃいましたら、きいたかし後援会事務所(093-941-7767)までご一報いただければありがたいです。
QRコード
きいたかしブログはモバイルでもお読みいただけます。
QR
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -